まだ薄暗いグランドキャニオン。
空気がひんやりと冷たい。
Joeが連れて行ってくれたのは、展望台からちょっと離れた僕達だけの場所。
どのくらい待っただろう、そんなに長い時間ではなかったと思う。
遠くで太陽が顔を出すと、秒刻みであたりが明るくなるのがわかる。
「太陽ってあったかいね」
ターニィとそんな言葉を交わした。
グランドキャニオンの地層が太陽の光に照らされてその表情が変化する。
この大地の悠久の営みの中で、数限りなく繰り返されてきたこの光景。
僕達が見たのはその中のたった一回。
そのたった一回でも、この風景に出会えたことに感謝したい。
***
今、自分の記憶に残っているあの風景を思い出して文章を書いている。
書き進めていくうちに、ちょっとした違和感を感じる。
僕は、あの時、あの場所で、何を考えていたのだろうか。
こんなことを思っていただろうか・・・
ただただ、太陽と大地とみんなを見ていただけだった。